2025年10月21日(火)、みんなの大学校の引地学長が、栃木県足利市にある生活介護事業所『ワークランド渡良瀬』で出張講義を行いました。
この日は、週替わりアーティストの瀬戸山智之助さんとオンラインでつながり、音楽の講義を届けました。
講義が始まる前、ある利用者さんは職員に何度も触れたり、手を引いたりしながら、言葉ではない方法で自分の気持ちを伝え続けていました。
ところが、瀬戸山さんの声が響き渡ると、ふと背筋を伸ばし、周りの様子を静かに見つめ始めたのです。まるで、発信していた気持ちが音に導かれ、受け取る側へと切り替わったようでした。
一方で、少し人見知りのある別の利用者さんは、最初はなかなか心を開けない様子でした。けれども、瀬戸山さんの歌に合わせて手拍子を始めると、次第に自らの意思で体を揺らし、手を叩く姿へと変わっていきました。こちらは、まるで受信から発信へと切り替わった瞬間のようでした。

そして瀬戸山さんの曲「Story」が流れたとき、その二人が同時に腕を上げたのです。音楽を通して心が動き、互いの世界が共に響き合う。まさにその瞬間、音楽が人と人とをつなぐ力を感じました。
瀬戸山さんは、2023年のデフサッカー(聴覚障がい者によるサッカー)ワールドカップで、公式応援ソング「Story」を作詞・作曲し、自ら歌われました。この曲には、2025年に東京で開催されるデフリンピックにも想いを届けたいという願いが込められています。
障がいの有無に関係なく、歌い手と聴き手が垣根を越えてつながっていく。この日の講義は、まさに「ケアメディア」のあり方を体現する時間でした。

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